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更新日:2024年2月15日

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性の多様性啓発座談会「LGBTにやさしいまち しずおかを考える ~私たちにできること、今ここから~」(3)

「にじいろカフェ」が地元にある意味

細川知子氏

細川:社会活動をしている団体なので企業とはどうしても視点が異なりますが、特別なことではなく、日常の見直しは必要だと思います。とは言え、団体として特別な場やサポートを必要としている人に、どのようなサポートができるかということを考えて取り組んでいます。市民団体から法人になる時にメンバーで考え、運営に直接関わるスタッフについてもこれまで以上に多様性に富んだ様々な視点を持っている人に入ってもらうことを心掛けました。と言いながらも、活動が偏っていくので、その方向性は自分たちでも見失わないようにしないといけません。それから、この法人は啓発や相談ができるところと思われるのはよいのですが、やはり方向性としては多様性を出していきたいので、学校や企業等とコラボしながら、自分たちの取組についても幅広く伝えていきたいと考えています。

松尾:細川さんは、昨年色々な所と協働事業を展開していますが、当事者の反応はいかがですか。

細川:例えば、にじいろカフェで言えば、当事者ではない人も来てくださいと言っているので、参加者からは、こういうコミュニティに参加したことがない、人生で初めてこういう場に来たという人が多いようです。また、「移動できる範囲になければ参加自体できない」とか、「インターネットを使った情報やコミュニケーションをしたことがない」という話も聞くことができ、地元にできた意味があったと実感しています。その証拠に、参加者アンケートの反応では、「市がやっているので安心できる」、「地元にこういう所ができて良かった」というように「市」とか「地元」というワードがよく出てきます。

また、当事者のパートナーのみのテーマの時は、自分以外に同じような人もきっといるだろうけれど、「会ったことがない」、「出会い方が分からなかった」という声がありました。悩みの共有ができない、出会いにくいという意味では、ある意味パートナー特有の大変さがあります。パートナーの集まりもそういう声に応える形で実施したので、今後も柔軟に対応していく必要があると思います。実際にやってみた反応をすぐに活かすということを繰り返していくことがこの事業に求められていると感じています。

松尾:にじいろカフェは成人以上の参加が主になっていると聞きますが、若年層に対しては、今年、市内の小中学校全校に「すきってすてき」というキャッチフレーズのポスターを配布しています。子どもや先生の反応はどうでしょうか。

細川:アンケートでは、子どもたちは足を止めてじっと見ている子が多かったとありました。保健室前に貼っている所がとても多かったのですが、養護の先生が子どもたちと会話する場面が結構あったようで、「これはどういう意味?」、「これすごく分かる」という感想を言っていたそうです。一方で、「これは何が言いたいのか分からない」という子どもの反応もあり、学校の先生の意見にも、「イメージが先行しているポスターになっているので具体的に何を伝えたいのか分からない」、「子どもたちに何をどう伝えていくのか、自分たちにもちょっと難しい」という意見がありました。

松尾:敢えて絵で表現をしたということですね。ポスター作りは、静岡大学性の多様性研究会も関わったのですが、私個人は文字を読む方が理解しやすく、思考もしやすい特徴があるので、先生や一部の子どもと同じように、もう少し字があった方が読む気になるのではないか、何を言いたいのかストレートに伝わるのではないかとコメントをしました。このようなニーズもあるので、次年度に反映できれば非常にバランスが良い取組になると思います。

子どもたちが考えていることを言語化して、伝え方を一緒に考える

遠藤まめた氏

松尾:にじいろカフェは成人を対象とした回が多いので、今後若年層を対象とした取組も必要になってくると思いますが、遠藤さんは「にじーず」を開催していて、子どもたちの反応はどうですか。

遠藤:2つのグループをやっていて、「にじーず」が10代から23歳までのグループ、もう1つが「にじっこ」という15歳以下のグループで、下は5歳の子どもも来る状況です。15歳以下の子たちは基本的に家族の理解がないと社会資源に繋がらないことが多いです。だから、中学生以下で繋がる子達は家族がある程度了解している場合にほぼ限定されます。その年齢で家族の理解がない場合というのは、結構辛い状況だと思います。幸い理解があってグループに来られている子たちも学校とのやり取りで家族が大変な思いをしていることがよくあるので、中学生以下では家族のサポートも重要です。高校生以上に関しては、家族の理解がなくても来られますが、「にじーず」に来ることを家族に秘密にしていることが多いですし、家族に話したとしても理解されないことがほとんどです。だから、子どもたちは自分の心を守ったり、自分の生活を守るために、私たちが代わりに親に伝えてあげることもできないので、その子たちが自分の考えていることをまず言語化して、他の人にどうやったら伝えられるのかということを積極的に一緒に考えてあげる必要があります。例えば、制服や修学旅行、名前にちゃん付けするのを止めてほしいことなど、どういう言い方であれば言えるのかを一緒に考えて、結局はその子が言う。その子が自分の口で頑張って言える範囲を探していく。本当に具体的にその子の生活を守るための言葉を探していくのが、子どもに対しては今必要でやっていることです。

松尾:実際に子どもたちは変わっていきますか。

遠藤:先生に言う子どもも結構います。例えば、「性の多様性の授業をやって。」と先生に言って、実際に授業をやってもらえた子もいましたし、学校の図書館に本がないと嘆いていた子も投書して本を入れてもらえたり、言える子は言っています。でも言えない子は言えないです。

松尾:学校も言語化できる子どもばかりを対象にするのではなく、言語化を苦手とする子どもたちからどうニーズを引き出すかということを、先生もやっていかなくてはいけないと思います。子どもたちがこう言っているからこう対応するというように、言語化と学校の対応は結び付くため、子どもたちが言語化できるよう支援しながら、一方で学校の先生も子どもたちの思っていることを引き出せるテクニックを身に付けていくという、その両方が大事だと考えます。

遠藤:LGBTに限らず、まず考えを紙に書いてみて、ちゃんと声を伝えるといったことは、子どもにとって必要なスキルだと思います。うちのグループに発達障害がある子どもが来て、自分の特性を伝えるために、「私はすごく喋りすぎるので、喋りすぎていたら止めてください。」と自己紹介の時に言います。そうすると他の同じような困りごとを持っている子が自己紹介の時に同じように言う。「私は文字を書くのが苦手なので文字を書いてください。」とか。そう言えるようになると、本当にダイバーシティが見える状況で、色々な人がいて、困りごとがあったらちょっと言ってみようということができるので、その延長線上に学校があれば、例えば「理由は言いたくないけれど、お風呂は他の人とは入らない。」というやり取りができるようになり、もっと色々な人が生きやすくなると思います。

「できている」「合っている」ではなく、多様な人たちからどう意見がもらえるか

松尾:井上さん、色々な取組をされていますが、今後どういう展開を考えていらっしゃいますか。

井上:色々なことをやっていますが、正解はないと感じています。弊社の取組に対して喜びの声が8割としたら、2割はお叱りごとを受けています。「丸井のやっていることはちょっと違う」、「これは全然だめ」という声もある訳です。ある時、ゲイの方から「丸井は間違っていることが多いんだよ。でも、それがいいんだよね。他の企業は、僕たちみたいなLGBTQが『いない』前提でサービスを展開しているけれど、丸井は間違っていることは多いけれど、『いる』という前提でやっているから、初めてそれに対して『もっとこうしろよ』と言えるようになったんだ。」と言われたことがあります。「できている」、「合っている」ではなくて、取り組むことによって多様な人たちからどう意見がもらえるかということを今愚直に進めています。

教育現場の話を聞くと、NPOや教員の方が子どもたちの多様性をしっかりキャッチアップして育んでいこうと取り組んでいる中、企業は就職活動の時にまだ一律の規定や判断で採用していて、会社に入ると伸び伸びと暮らしてきた子どもや学生がまたクローゼットに戻ってしまうということが、相当大きな問題になっています。遠藤さんの話の中で「お手本になる」という言葉が出てましたが、弊社が取り組んでいることをもっと外へ発信して、それにより企業が何らかのプラスになることをどんどん作っていき、他の企業に真似をしてもらいたいと思っています。我々が利益を上げるだけではなくて、我々が成功することによって他の企業が当然真似をしてくるので、どれだけそういった発信力を強められるかということをやっていこうと思っています。

個人的な意見ですが、弊社は洋服や靴の販売、クレジットカード発行のビジネスが主なので、教育現場や悩んでいる方のニーズを知りすぎてくると、究極的には自社だけではキャッチアップできなくなってきます。その時に、これまで培ってきたネットワークや知見を他の企業やNPO、自治体の方とコラボして、企業なりの発想から将来社会人になる子どもたちの支援に繋がるような活動や行動をしていきたいと思っています。

私自身大学などに呼ばれて講義をするのですが、こういう取組をしている企業に入りたいという学生が非常に多いと感じています。そういう学生に聞くと、職種で選ぶのではなくビジョンで選ぶと。やはり自分の仕事で全ての人を幸せにできるのならこういう仕事がしたいと、明らかに学生は変わってきています。私たち世代の意識が変わっていないことにより、せっかく培われてきた良い芽を摘んでしまわないように、弊社は一企業だけではなくもう少し繋がり変えていきたいという気持ちを今持っています。

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市民局男女共同参画・人権政策課男女共同参画・人権政策係

葵区追手町5-1 静岡庁舎新館15階

電話番号:054-221-1349

ファックス番号:054-221-1782

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