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更新日:2024年2月15日

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所信表明

静岡市議会6月定例会の開会にあたり、ご挨拶と所信を申し上げます。
この度、多くの市民の皆さまのご支持をいただき、静岡市長に就任してから、ちょうど2か月となりました。改めてその責任の重さを実感し、適切な市政を行い、市民、社会にとって良い結果を出し、皆さまの期待に応えてまいる所存です。

さて、静岡市は、全国1,700以上ある市町村の中でも、5番目の広さの面積を有し、北は標高3,190mの間ノ岳から南は駿河湾まで、多様で豊かな自然が広がっています。そこには、地域・地区ごとに様々な暮らし、生業・産業があり、そして、災害の形も様々で、ありとあらゆる地域課題が山積していると言っても過言ではありません。静岡市は、そのような類い稀な環境の下、政令市という広い行政権限を持って、市政運営を行うという特殊性を有しています。
また、今、世界は「地球環境の世紀」「AI(人工知能)などによる知能革命の時代」という、大変革期を迎えています。新型コロナなどの疫病、自然災害の頻発化・激甚化、円安・物価高など、私たちをとりまく環境は非常に厳しい状況にあります。そして、人口減少も加速してきています。
このような時代においては、静岡市政は、20年後30年後を見据えた中長期的な視点を持ち、かつ、現実の今そこにある課題を直視し、社会課題を改善・解決していくとともに、新しい価値や魅力づくりを行うなど、時代の変化に適応できる市政に変化し続けていくことが必要です。

市政運営においては、どういう社会・まちの姿をめざすかを示し、それをどういう方法で実現していくかを、まず明確にする必要があります。その基本となるものとして、静岡市は、令和5年度から12年度までの8年間にわたる第4次静岡市総合計画(4次総)を策定しました。私は、4次総がスタートした直後の4月13日に市長に就任しましたので、まず、4次総の評価が必要です。
4次総の内容は、主に、政策・施策・個別事務事業を体系的に示しているものです。
例えば、防災・消防分野では、2030年のめざす姿を「あらゆる危機から市民の『いのち』と『くらし』を守り、安全・安心に暮らせるまちを実現します」とし、政策2「あらゆる危機に対応できる強靱な体制整備を推進します」、施策1「危機管理体制の強化」としています。
このように、4次総で掲げられている政策・施策は、実施することが必要なものがほとんどであり、継承すべきと考えています。しかし、4次総には、十分ではないところがいくつかあります。時間の都合上、3つ取り上げます。1つ目は、時代認識、すなわち時代の潮流についての基本認識、2つ目は市政運営の方法、3つ目は、人口減少問題への対処です。

まず、1つ目の時代認識についてです。
先ほど申したように、世界は地球環境の世紀と知能革命の時代という大変革期を迎えています。4次総ではデジタル・トランスフォーメーション(DX)やグリーン・トランスフォーメーション(GX)を横断的な視点としています。しかし、DX、GXは単なる視点ではなく、最も有力な政策手段として最重点で取り組むべきものです。

2つ目は、市政運営の方法についてです。
4次総においては、めざす社会の姿と、政策・施策は示されていますが、どういう市政運営の方法でそれらを実現するかについては、「市政運営の基本認識」として、25行が書かれているだけです。政策は、適切な市政運営方法、仕事のやり方のもと、実行に移され、実現されること、すなわち、結果・成果を出すことが重要です。4次総に示されている25行では、市政運営の方法の提示が十分ではありません。
私は、市政運営は、行政経営であると考えています。経営といえば、企業経営が思い浮かぶと思いますが、企業経営と行政経営には大きく異なる点があります。それは、用いる経営資源の違いです。
企業経営では、自社の経営資源を用いて事業を行い、社会貢献をしつつ、社会から評価された結果を収入として内部化し、収益を得ることが必要です。一方、行政経営では、経営資源は市役所の持つ直接の資源だけではありません。社会全体の力を経営資源として、適切な行政経営によって、社会全体の活動が活発になり、様々な利益や幸せが生まれ、社会全体の便益が最大化する。社会全体の便益の一部が税金として内部化されますが、税収増が市政にとって最も重要なことではありません。
このように、「市政の経営資源は社会全体の力」であり、「地域づくりの主役は人と社会」「市の仕事はいかに社会全体に大きな便益をもたらすかである」、ということを意識した行政経営が重要です。

3つ目は、人口減少問題への対処についてです。
4次総では、定住人口については、国立社会保障・人口問題研究所、いわゆる社人研が実施した将来推計を上回る「定住人口」を目標に掲げています。しかし、定住人口増についての積極的な取組はなく、交流人口、関係人口の増加を目指しているように見えます。
私は、定住人口の減少の流れを変えることが必要であると考えています。静岡市の人口減少率が、県の平均よりも、また、同じ政令市である浜松市よりも高いことを、しっかり受け止めなければなりません。
その大きな原因の一つは、県平均、浜松市より、静岡市の出生率が低いことや、生涯未婚率(50歳時の未婚率)が高いことです。国勢調査によると、出生率は1985年からの35年間、県平均及び浜松市を下回り、かつ、生涯未婚率は同じ期間で、県平均を常に上回り、浜松市と比較してもほとんど上回っています。このように、定住人口の減少の原因の根底には、静岡市の出生率の低さと生涯未婚率の高さがあるという、データ、現実を直視した政策が必要です。

このような認識のもと、4次総については、基本的には継承し、不十分な事項を強化する、いわば「発展的に継承する」というのが私の基本的考えです。

その上で、私の市政運営の方針を申し上げます。
私は、めざす社会の姿を、「安心感がある温かい社会」とし、その社会を、みんなで一緒に、共に創っていく「共創」で実現するため、「根拠と共感に基づく政策執行」による「温かい市政」を行ってまいります。

まず、めざす社会の姿についてです。
めざす社会の姿を考える時に重要なことは、その地域の特徴・特性・強みを意識することです。静岡市には、固有の魅力がたくさんあります。それは、「美しく豊かな自然環境と温暖な気候」「歴史性が根付いた文化力」「温かい人のこころと絆」、そして「多様で深みのある産業力による経済的活力」などです。中でも「温かい人のこころ」は、静岡市の絶対的な強みです。私は、静岡市固有の強みを活かした、「安心感がある温かい社会」の実現を目指してまいります。

次に、共に創る「共創」についてです。
地域には、社会を良くしたい思いと行動という「社会の大きな力」があり、世界には「大きな知」があります。これらはしばしば、バラバラに存在していますが、それらの力がうまくつながれば、社会問題の解決や新たな価値・魅力づくりの大きな力となります。地域づくりの主役は「人」であり「社会」です。
このことを認識し、その主役が動きやすく、そして、「社会の大きな力」と「世界の大きな知」がもっとうまくつながり、共に創る「共創」ができるよう、それらを下支えし伴走する温かい市政を進めてまいります。
また、「共創」のためには、「開かれたわかりやすい市政」が重要です。市政の政策決定の考え方や市の持つ情報を、わかりやすく公開することで、それなら一緒に取り組んでみようと、思っていただけるような市政といたします。

さらに、「根拠と共感に基づく政策執行」についてです。
各種データを見ると、静岡市の状況は、決して好ましいものではありません。例えば、全国20の政令市の中で、人口減少率は2番目に高い。なぜ、住みやすいまち静岡市がこのような状況であるのかを分析し、それを政策形成、執行につなげていかなければなりません。変革期では、思いつき、思い込みの政策やこれまでの延長上の政策だけでは通用しません。
「論理」と「根拠」に基づき実行方法を考え抜き、その実行方法をわかりやすく社会に提示し、地域社会や市民の共感を得て実行するという、「根拠と共感に基づく政策執行」が重要です。

このような考えのもと、具体的にスタートさせたのが、「社会の大きな力と知を活かした根拠と共感に基づく市政変革研究会」です。
新たな時代の新たな政策・施策を立案し実行につなげるため、DX、GX、BX(ブルー・トランスフォーメーション)といった、社会経済の将来動向や最新の科学技術に精通した有識者を委員に迎え、6月1日に第1回研究会を開催しました。
第1回の研究会では、これまでの政策形成にはなかった、未来社会を見据えた新たな視点からのご意見をいただき、今後の展開に期待の持てる結果となりました。
今後は、委員には政策アドバイザーとして、主に市の若手職員と密接に意見交換を行っていただきつつ、防災、DX、GX、子育て・教育などの個別テーマの分科会での検討を進めてまいります。
この他にも、自治会活動などの新しい時代の共助社会づくり、中山間地振興、茶業などの産業振興、まちづくり、人口減少対策など、課題は山積しており、いずれもこれまでの延長上にない取組が必要です。これまでの延長上にない取組は、軽々に決められるものではありません。また、部局横断的な取組が不可欠です。このため、副市長などを責任者とする多数の検討会を起こし、新しい政策・施策を立案し、すみやかに実行に移してまいります。

最後に、今定例会に提出させていただく主な事業を2つご説明します。

1つ目は、静岡マラソンです。
新型コロナの感染拡大の影響により、平成31年(2019年)の開催を最後に休止を余儀なくされてきました。一方で、市民、経済団体、企業などからは、復活を望む声を数多くいただきました。これまでの民間主体の実施体制から、行政と民間が共働して実施する体制へと変更し、5年ぶりに開催したいと思います。
これは、先ほど申し上げた私が考える行政経営の一つの例といえます。マラソンは大きな経済効果、社会効果を生みますが、5年ぶりの再開にあたっては、大きな社会経済効果がある事業であっても、民間事業では、その効果を収入として内部化できるか否かの採算リスクが大きく、事業再開が躊躇されていました。
開催によって、市内外からの多くの来訪や宿泊者の増加、地域ブランドの向上など、社会全体への効果が見込まれますので、採算リスクを行政が下支えすることで、事業を再構築し、社会の大きな力が動くようにすることを期待するものです。

2つ目は、巴川の流域治水対策です。
令和4年の台風15号による浸水被害に加え、令和5年の台風2号など、自然災害の激甚化・頻発化は著しいものがあります。そこで、巴川流域等の脆弱性の分析に基づき、遊水地や貯留管等の既存施設の運用方法の見直しといった即効性のある対策や抜本的な対策を検討し、早急に治水対策に反映します。
加えて、災害発生時における早期の避難行動につなげるため、気象予報、雨量、河川水位等の公的情報を基に、SNSなどによる社会からのリアルタイム情報も活用して、河川の水位や氾濫を予測し、危険度情報を提供するシステムを導入し、防災対策の強化を図ってまいります。

この2つの事業の他にも、事業者や市民の皆さまへの物価高騰に対する支援や、インバウンド需要の拡大に伴う消費拡大に向けた支援、大規模土砂処分地の確保など、「社会の大きな力」を下支えし、伴走する取組を中心に補正予算案を提出いたしました。

以上、私の市長就任に当たっての所信、市政運営の方針、そして早急に対応する事業について申し上げました。

本日、述べた内容は、私ひとりはもちろんのこと、市役所だけで実現できるものではありません。社会全体の力、みんなで一緒に、共に、明るい未来を創っていくという「共創」のため、何とぞ、議員の皆様方のご支援を切にお願い申し上げまして、私の所信表明の結びといたします。
ご清聴、誠にありがとうございました。

所信表明 全文(PDF:112KB)

お問い合わせ

総合政策局企画課政策企画・調整係

葵区追手町5-1 静岡庁舎新館9階

電話番号:054-221-1020

ファックス番号:054-221-1295

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