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更新日:2026年1月9日
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田中 渉(たなか わたる)静岡市経済局商工部産業政策課スタートアップ支援係/係長
町塚 俊介(まちづか しゅんすけ)静岡市経済局商工部産業政策課スタートアップ支援係(地域活性化起業人) / 株式会社あゆみの 代表取締役
田淵 良敬(たぶち よしたか) 株式会社Zebras and Company(ゼブラアンドカンパニー)/共同創業者・代表取締役、Tokyo Zebras Unite 共同創設者 / 代表理事
2025年11月4日に「出資による社会変革(共創型)推進事業」の募集が開始されました。今回の対談では本事業の立ち上げに携わったお三方にお話を伺います。

ー11月4日に「静岡市出資による社会変革(共創型)推進事業」の募集が開始されました。この制度が設計された背景・経緯について教えていただけますか?
田中:静岡市では市が抱える社会課題を解決することを目的に、昨年度から「知・地域共創コンテスト」という名称で、革新的な技術を有するスタートアップと行政・地域団体との共働で社会課題解決に取り組む事業を始めました。
このコンテストでは主に実証実験までのフェーズを支援しているため、それ以降の社会実装フェーズを後押しするための取組として、今回新たに「静岡市出資による社会変革(共創型)推進事業」を立ち上げました。
ー既存の制度に比べてどういった特徴がありますか?
田中:他都市の既存の制度として補助金や交付金などの制度がありますが、こういった制度には”どうしても短期的な支援になりがち”という課題がありました。そこで検討や議論を進めていく中で、複雑・多様化した社会課題を解決していくためには市として中長期的な関わりが必要であり、そのためには出資という形態が適切であるという結論に至りました。

ー田淵さんはどういった経緯で今回の事業に関わることになりましたか?

田淵:静岡市に「ファイナンスをめぐる冒険 組織のパーパスに適した資金調達はどうすればできるのか」という書籍を使った勉強会で来させていただいたことがきっかけで、その際に地元の老舗企業や静岡市の方々と話が盛り上がり、この機会を次に繋げられると良いよねという話が出ました。そこから少し経って、静岡市の方から今回の相談を受けました。
ー最初に相談を受けた際にはどのような印象を持たれましたか?
田淵:自治体が民間のスタートアップに対して直接出資をする例はさほど多くないと思うので、そこに珍しさを感じたと同時に意義のあることだと感じました。また、静岡市は都市の規模がミドルサイズであったり、海に面していて一次産業が盛んであったりという印象があったので、静岡市が抱えている地域課題に合わせた制度設計が出来ると面白いのではないかと感じました。
ー制度化にあたり、まずどのようなことから始められて、その後どのような経緯を辿っていかれましたか?
町塚:市としては、社会課題解決に中長期的に関わっていくためには出資という手段が合うのではないかという仮説があったものの、なかなか他の事例が見つけづらい状況でした。また、「他の自治体における類似の施策を比較して、静岡市での施策に繋げる」という方法も試みましたが、どうしても施策ありきになってしまい、適切な制度コンセプトを決めきることが難しい状況でした。そこで、今回の施策のコンセプトや目的といった前段部分から寄り添っていただける方ということで田淵さんにご相談しました。
相談の中では、出資制度の全体像を描いていくにあたり、「自分たちはなぜこの施策を行うのか」や「どういった方々を対象とするのか」「対象とする方々の現状や課題感は何で、今回の出資制度を通じてその状況がどう変わっていくのか」「出資を通じてステイクホルダーとどういった関係性を築いていきたいのか」などについて専門的なアドバイスやファシリテートをいただきながら進めていきました。
ー制度を形にしていく過程で、印象に残っているエピソードはありますか?
田淵:広範な面積を有し、人口が70万人近くいる静岡市の課題の特徴として、ニーズの多様化があると思います。例えば、中心部では不動産価格の高騰や、より便利な交通サービスが求められるのに対して、郊外では過疎化の課題があります。そういった中、多様化するニーズの解決は市のみで考えるよりも民間から解決策を募集し、ともに取り組む方がより良い解決策が生まれるのではないかという議論が出ていた点が印象的です。
また、最初は「市が出資します」という話から始まりましたが、そのような方法ではどうしても出資先企業への支援が限定的なものになってしまいます。そのため、議論の過程で、「静岡市の役割は単純な出資だけに留まらず、地元の兄・姉ゼブラ的な企業や地元に投資をするような投資家に対し、市や出資先の取り組みを知る機会づくりや関係者間のプラットフォームとしての機能も含まれるのではないか」という結論に至りました。
町塚:市としても一度お金を出して終わりではなく、社会課題解決に取り組む企業へのお金の出し手が増えたり、出資先が成長していくことによって地域の中で市と共働する企業の新たなロールモデルが生まれることと、出資先を筆頭に社会課題解決に取り組む関係者のコミュニティが拡大していくという所を目指したいですし、それが公共ならではの立ち位置なのではないかと考えています。
田淵:その後の制度もそれをベースに色々考えました。共同出資の可能性や、市が出資した後に出資をする企業のことを考えた際、どういう契約にした方がいいのかなどについても検討を重ねました。
ーこの記事をご覧の方に向けて、メッセージをお願いします。
田中:静岡市の社会課題解決に一緒に取り組みたい、そういった方を支援したいという方と一緒にこの取り組みを進めていきたいと思っています。制度を知っていただいて、静岡市が面白い取り組みを始めたなという風に思っていただけると非常にありがたいです。
町塚:静岡市内にある特定の社会課題解決を行っていきたいという企業にとっては、今回の制度を活用していただくことで、取り組んでいる社会課題が市としても重要なものとして位置づけられている、ということが見えやすい形になりますので、地域内外の他のプレイヤーからの共感やサポートを得られる可能性が高まることが期待されます。また、出資者がVCではなく自治体であることにより、リターンを得るまでの時間軸を長めに設定できるという点も特徴的であると考えています。
一つの企業だけで解決できる社会課題には限界があるからこそ、今回の制度を通じて様々な企業や投資家の方と出会い、深い関係性を築いていくことで、皆さんと一丸となって静岡市をより良い場所にしていきたいと考えています。
田中:今回の制度を通じ、静岡市は、市が抱える社会課題の解決に取り組みたいと考えているスタートアップの皆さんの活動を積極的に下支えし、時にはプレイヤーの一員として一緒に取り組んでいきたいと考えています。ぜひ、みなさんの応募をお待ちしています。
詳しくは、静岡市出資による社会変革(共創型)推進事業のページをご覧ください。

田中 渉(たなか わたる)
静岡市経済局商工部産業政策課スタートアップ支援係/係長
静岡市出身。2006年に静岡市役所に入庁し20年目。これまで主に待機児童対策などの子育て支援部門や、市の予算編成などの財政部門を経験し、2025年4月から現職。周囲のメンバーと共にスタートアップ分野の知見を深めながら、これまでの経験を活かして市のスタートアップ施策全体を推進している。

町塚 俊介(まちづか しゅんすけ)
静岡市経済局商工部産業政策課スタートアップ支援係(地域活性化起業人) /株式会社あゆみの 代表取締役
起業家・エグゼクティブコーチ
静岡市出身。
慶應義塾大学卒業後、株式会社リクルートを経て2015年に株式会社あゆみのを設立。起業11期目。「人の歩みに寄り添う場づくり」を理念に、西伊豆での福祉事業などの社会課題解決型事業と起業家支援を両立する「二刀流スタイル」を展開。
社会性と経済性を両立する起業家支援を神奈川・静岡を中心に推進。東海道社会起業家ベルト構想を掲げ、各県でロールモデル企業を10社ずつ輩出することを目標としている。著書に『つながりの力で自分の人生を生きる~成人発達理論を実践する5つの旅~』

田淵 良敬(たぶち よしたか) 株式会社Zebras and Company(ゼブラアンドカンパニー)/共同創業者・代表取締役、Tokyo Zebras Unite 共同創設者 / 代表理事
日商岩井株式会社(現双日株式会社)を退職後、LGT Venture Philanthropy(リヒテンシュタイン公爵家によって設立されたインパクト投資機関)、ソーシャル・インベストメント・パートナーズ、SIIFなどで国内外のインパクト投資に従事。お金のデザインやグローバルな経験・産学ネットワークから世界的な潮流作り、海外パートナー組成を得意とする。2021年3月にZebras and Companyを共同創業。同志社大学卒、IESE Business SchoolでMBA取得。2022-2024年米国Zebras Unite理事、Cartier Women’s Initiative東アジア地区Community Activator。経済産業省 中小企業庁「ローカル・ゼブラ推進政策」研究委員・伴走支援委員、金融庁インパクトコンソーシアム地域・実践分科会メンバー。大学院大学至善館特任准教授。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。島嶼財団アドバイザー。ゼブラ企業など向けファイナンスを世界の20以上の事例とまとめている、Z&Cが監訳した「Adventure Finance」の翻訳本「ファイナンスをめぐる冒険」が2024年12月に刊行。
ーインタビュー後記
今回のインタビューを通して、これまで官民連携の文脈においてスタートアップ側へ求められてきた「新しいことに挑戦する姿勢」をご自身でも体現されようと、先進的な一歩を踏み出されている静岡市の方の姿がとても印象的でした。また、今回の試みが、スタートアップ企業と静岡市との関係性をさらに進化させ、「様々な本気の集まる場所」へと変化していく期待感も感じるインタビューでした。
(編集・文:岸田有香子)
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