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更新日:2024年2月15日

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第2弾巴川水系の災害対策(その2)

バックウォーター現象は2018年に岡山県の高梁川の支流の小田川で発生し、大災害となったことで注目されました。
このためもあってか、バックウォーターは、しばしば本流と支流の関係として次のように説明されます。
「大雨で支流が増水した際に、本流の水位が高いと、支流から本流へ水が流れ込めなくなり、支流の水位がどんどん上昇する。」
この説明は正確ではありません。実際、巴川本流と支流長尾川の関係では、本流の巴川にバックウォーターの影響(水が下流へ流れ込まない状態)が発生しています(写真1)。

写真1巴川と長尾川合流地点の様子

写真1

バックウォーターの正確な定義はさておき、なぜ、河川の合流地点でバックウォーターが発生するのでしょうか。科学的正確性には少し目をつぶって、わかりやすさを重視して、ちょっと長い説明を試みます。
川の水はエネルギー量の高いところから低いところに流れます。水のエネルギー量は、高さエネルギーと流れエネルギーの足し算で決まります。高い位置にある水は高さエネルギー(位置エネルギー)が高いのでより低い位置へ流れようとします。
川の水のエネルギーのもう一つは、水の流れエネルギー(運動エネルギー)です。流れが早いほど、エネルギー量が大きいのは実感できると思います。
巴川本流と支流長尾川の関係では、長尾川は巴川本流に比べて急流なので、より大きな運動エネルギーを持っています。写真2は巴川本流と長尾川の合流点(巴長合流点)から1.5kmほど上流の長尾川の様子です。勢いよく流れています。

写真2増水時の長尾川上流の様子

写真2

このため、巴長合流点で見ると、巴川本流と長尾川の水位が同じであっても、長尾川の方が運動エネルギーが大きい分、エネルギー量が大きい状態です。
したがって巴長合流点より上流の巴川本流の水は、エネルギー量が長尾川の水より小さいため、長尾川の水のエネルギーに負けて、下流側に流れ込むことができません。
このように、巴川においては、大雨で長尾川の流れが早くなると、巴川本流と長尾川の合流点で俗称「長尾川の壁」という現象が発生し、巴川本流の水が下流に流れ込めなくなります。この現象の影響は、巴川本流の上流へと遡って(バックして)いきます。
巴川本流と大谷川放水路の分岐点で、巴川本流の水が本流の下流側に流れなくなるのは、長尾川の壁によって巴川本流の水がせき止められた状態が、上流に遡って(バックして)いき、上流の水位に影響しているためです。
ちょっと長い説明となりましたが、わかりやすく説明するに、どうしても長くなってしまいました。
このような巴川水系の水の流れの構造を理解していると、大谷川放水路や麻機遊水地の治水効果などが見えてきます。
それは次回以降にします。

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