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ページID:1623
更新日:2024年2月15日
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14 褶曲構造
A構成・特徴・状態
付加体の特徴的な構造は、陸側に傾く逆(衝上)断層と様々な規模の褶曲構造の組み合わせである。これらのうち断層は重要な役割を果たしているが、層に平行なものが多いためか、その存在は目立たない。南アルプス周辺では、断層よりも褶曲構造を見いだす機会が多い。褶曲には様々な規模・形態のものがあるが、露頭規模では白根帯、寸又川帯、犬居帯、瀬戸川帯の数cm程度の単層を持つ砂岩泥岩互層や層状チャート層、泥質のメランジュあるいはスレート中に認められることが多く、その多くは付加時の水平圧縮応力下で形成されたと考えらる。東俣林道や南赤石林道などの寸又川帯に発達する褶曲はその好例である。褶曲の一部は、付加前の未固結時に生じた海底地辷りによるスランブ褶曲や、瀬戸川帯のような付加後の層平行な横ずれ剪断運動に伴って形成されたものもある。
B周辺環境
寸又川帯の砂岩泥岩互層の露頭規模の褶曲については、林道の一部および大井川や寸又川の河床に連続的に認められる。林蔵ぞいの好露頭については、モルタル吹きつけがなされないように、保護が必要である。稜線上では、チャート層を除いて褶曲構造は観察しにくい。
C価値
褶曲は付加体の地質構造の特徴の一つであり、山岳を形成する作用として非専門家にとっても興味深い現象である。四万十帯では、赤石山地で露頭規模の褶曲が多数記載されているが、それに比べて他地域の四万十帯での報告は少ない。アルプスやカナディアンロッキーのように、100m以上の規模の褶曲が大岩壁に見られるような例がないのが残念である。
D場所
白根帯では、中河内岳竹内門、千古の滝など、寸又川帯では東俣林道赤石渡付近、気田川分岐-山犬段間の南赤石林道。犬居帯では千頭、接阻峡周辺の大井川流域、瀬戸川帯西山温泉早川河床など