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ページID:1612
更新日:2025年2月17日
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3.岩塊斜面
A構成・特徴・状態
南アルプスの高山域で最も大規模・広範囲に発達する周氷河地形は、岩塊(または岩海)斜面である。岩塊斜面とは森林限界上の山頂部や山腹斜面で、凍結・融解現象の繰り返しによってほぼその場所で生産された大小の角礫が堆積している斜面である。南アルプスの場合には凍結・融解現象に加えて、もともと異方性の強い堆積岩類からなり、山地全体の急速隆起による応力解放によって形成された節理を利用して岩塊が生産されやすかったことが、岩塊斜面が発達する要因になったのであろう。岩塊斜面は砂岩層が卓越している稜線部に発達していることが多く、仙丈ヶ岳山頂付近、赤石岳山頂から南西斜面に大規模なものが見られる。仙水峠の岩塊斜面はホルンフェルスの角礫よりなり、現在は森林限界下にあるが、岩塊の移動が継続しているために植生が発達していない。また低起伏地を覆う岩塊はソリフラクションローブ、塊状土、構造土などの微地形を作る素因となっている。移動を停止した岩塊斜面は、土壌を涵養してお花畑を作ることが多い。
B周辺環境
南アルプスには大小様々な規模の岩塊斜面が発達しており、登山道にそってそれらを観察することができる。現在の森林限界以上にあり、お花畑をともなわない裸地では岩塊の移動が継続している可能性がある。標高の低い部分は既に森林化しているが、木々の間を大小の岩塊が埋めており、かつて周氷河環境にあったことが読み取れる。
C価値
南アルプスの高山域に発達する岩塊斜面は、この山地の地形の特徴の一つであり、緩やかな稜線部を作る原因の一つでもある。山地地形や植生の発達と周氷河現象との係わりを理解する上でも重要な教材となる。
D場所
仙水峠、白鳳峠、荒川岳南西側斜面のお花畑、赤石岳西斜面、聖岳南西斜面など