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ページID:1610
更新日:2025年2月17日
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1.稜線上の低起伏地形面群
A構成・特徴・状態
南アルプス周辺には、甲斐駒ヶ岳、北岳、塩見岳、赤石岳などに代表される聳え立つ山頂の近傍に比較的平坦な山稜が発達する。この地形の対立が、この山地の特徴である。その小起伏面の成因として、最初に百間平や大聖寺平などを代表として鮮新世に形成された隆起準平原の名残であり、そこから聳える山頂は残丘とされた。しかし、面上に礫層(山砂利層)や風化殻がないことから、疑問がもたれてきた。それに対して、その内部および周辺にソリフラクションローブや階状土などの周氷河現象が認められることから、これらは周氷河性平滑斜面と考えられるようになった。近年、高山域の平坦地に加えて、標高2500m以下の山稜にも大小の線状凹地が発達し、凹地が複合して低起伏地形を形成していることが指摘されている。たとえば,伝付峠、赤崩上方、山伏南方などである。この場合には凹地の方向は地層の走向にほぼ一致している。また、これらには山腹部に大規模な崩壊地を伴うものも多いので、山稜部での正断層形成を伴う、重力性の地形である。これらの低起伏面の中には、周氷河性平滑斜面と線状凹地が複合したものもあろう。
B周辺環境
低起伏地形は、山頂を結ぶ稜線上の縦走路の各地で観察できる。その規模と形態は様々である。特に線状凹地は高山域ばかりでなく、樹林帯の中でも随所に発達している。
C価値
起伏が大きい山地の稜線上に聳え立つ山頂と、その下の低起伏地形面が共存することは南アルプスの特徴である。その成因については完全に解決されてはいないが、山地の発達過程を示すものとして貴重な存在である。
D場所
伝付峠、赤崩れの上、丸山、大聖寺平、ダマシ平、センジケ原、山犬段など