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更新日:2026年9月29日
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井上恒彌議員の質問への答弁概要
目次
防災・減災
静岡市総合防災訓練について
質問:9月1日に実施した静岡市総合防災訓練のねらいを実施後の評価はどのようか。
私は、災害などの危機から市民の皆様の生命と財産を守ることが、市長として最も重要な責務であると考えています。
とりわけ発生の切迫性が指摘されている南海トラフ地震は、市民の命と暮らしに甚大な被害をもたらす、静岡市にとって、あるいは静岡市民にとって最大の危機です。
この危機に対して、市行政が、平時からどれだけ備え、いざという時にどのような判断を行い、どのような行動につなげることができるのかが、市民の生命と財産を守れるかどうかに大きく影響します。
私は、災害発生時、いわゆる事中の対応において、「初動全力」、「最悪の事態の想定・想像」、「平時組織の有事組織化」の三つを重視しています。
事中の災害対応は、発災直後の緊急対応から、その後の応急復旧に至るまで、被害の現状・現実について、情報が限られている中で、また、将来に何が起きるかわからない中で、そして状況も刻々と変化する中で、その都度、不十分な情報下での適切な判断と臨機応変な対応が求められます。
とりわけ発災直後は、被害の全体像がつかめておらず、細部についても情報が限られています。
しかし、そのような状況であっても、市民の命を守るために判断をしなければなりません。限られた部分的情報から災害の全体像を想像しつつ、救命救助をはじめ、今、現場で具体的に何が課題なのかを見極め、今何を優先するべきなのかを決める。そして、その先に何が起き得るのかを想像しながら行動する。その判断力と想像力こそが、事中の災害対応において最も重要だと考えています。
この際、「備えていることは役に立つ。しかし、想定と実際は異なり、想定外がしばしば発生する。よって、備えていたことだけでは対処ができない。」ということを認識した上で、備えを充実させるための訓練をすることが重要です。
想定外が発生したときの、組織の対応力も備えと言えます。しばしば行われる、防災訓練は、あらかじめ決めた被害想定のもと、決められたシナリオに沿って、用意された対応ができたかを確認する訓練です。この訓練は練度を上げるためには重要です。
しかし、実際の災害では想定どおりに物事がすすむことは、まずありません。このため、私が市長就任以降は、訓練方法をいわゆるブラインド型訓練を中心とすることにしました。
ブラインド型訓練では、事前に被害想定が示されていません。訓練が始まってから入ってくる、断片的、かつ、不正確である可能性のある部分的な被害情報から全体像を想像し、何をすべきかをその場で意思決定する実践的な訓練を行ってきました。
9月1日の訓練は、そうした実災害に近い状況の中で判断する力を高めることを目的として実施しました。具体的には、最大クラスの被害が想定される、いわゆるレベル2の南海トラフ巨大地震ではなく、南海トラフの東側だけが先に滑るという、比較的発生頻度の高いレベル1相当の地震と津波を想定しました。ただし、地震は近隣で発生するため、レベル2と同じレベルの揺れになります。
一般的には、レベル2よりレベル1の方が被害が小さいので、対応しやすいと思われるかもしれません。しかし、今回想定したように南海トラフの東側だけが先に動いた場合には、その地震の被害への対応を進めながら、西側で発生する可能性のある後発の巨大地震と、それによる津波の発生可能性を常に意識しなければなりません。
その後発の地震・津波は、今日かもしれませんし、数日後かもしれません。その間、次の地震や津波を常に警戒しながら、救命救助や応急復旧を急がなければなりません。
つまり、今起きていることへの対応だけではなく、この先に何が起きる可能性があるのかを考え、想像しながら判断し、行動することが求められます。
このような状況こそ、実際に起こる可能性が高く、自治体としての対応力が試される場面です。よって、今回あえてこのような想定を採用しました。
さらに今回は、災害対策本部に私自身が不在となり、連絡もつかない状況を設定しました。実際の災害時には、市長が災害対策本部にいるとは限りません。市長が不在であっても、副市長を中心に組織として状況を判断し、必要な対応を進めることができなければなりません。
そのため、市長不在という状況で訓練を行うことについて、訓練を統括する危機管理局にも事前に知らせず、当日の本部参集時にはじめて市長不在がわかる形としました。そして、その状況下でどのような判断や対応が行われるのかを確認しました。
次に、今回の訓練の評価についてです。
今回の訓練では、これまで以上に難しい条件を設定したこともあり、各部からの被害状況の報告は行われたものの、その情報を踏まえて対応方針を決定するという点では、まだ十分とは言えない状況でした。とりわけ、今すぐにも次の大規模地震・津波が起きる可能性がある中での、対応が十分ではありませんでした。
また、避難者数が今後どのように推移していくのかという、これから起きるであろうことへの想像が不十分でした。
「今どうなっているのか」の確認だけでは不十分だということです。「今、現場で何が困っているのか」。
そして、「次に何が起きる可能性があるのか」。「その時に何が必要になるのか」。そこまで考えながら、想像しながら判断する力が、災害対応には求められます。
例えば、現在、避難所に2万人が避難しているとしても、明日も2万人なのか、それとも明日は5万人になるのかによって、必要となる物資も人員も対応方針も大きく変わります。
しかし、今回の訓練では、その先を見通して対応を組み立てるという点に課題があることが確認されました。また、市長不在時における組織としての判断力や対応力についても、さらなる向上が必要であることを確認しました。
これまで実際の災害時は、市長が災害対策本部の指揮者となって指示を出すことが多いので、他の職員はどうしても受け身、指示待ちになってしまいます。
しかし、私は、今回の結果を決して否定的には捉えていません。私は、防災訓練の目的は、訓練を成功させることではないと考えています。繰り返しになりますが、決められた手順を確実に実行できるよう練度を高める訓練も、もちろん重要です。しかし、本当に大切なのは、組織の課題や対応の「穴」を見つけることです。
実災害の場で初めて課題が、「穴」が明らかになるようでは遅いからです。今回の訓練では、多くの課題、いわば組織としての対応力の「穴」が見つかりました。
私は、それこそが今回の訓練の大きな成果であったと考えています。うまくいかなかったこと自体が問題なのではなく、どこに課題があるのか、穴があるのかを確認できたことに大きな価値があります。今後は、今回明らかになった課題を一つひとつ検証し、改善し、その「穴」を着実に埋めていきます。
そして、「今どうなっているか」を把握することだけではなく、「次に何が起きるのか」、「その時に何が必要になるのか」まで考えながら、想像しながら判断し、行動できる組織をつくっていきます。
市民の皆様の命と暮らしを守るため、今後も実践的な訓練と改善を繰り返し、静岡市の災害対応力のさらなる向上に全力で取り組んでいきます。