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更新日:2025年3月6日
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松谷清議員の質問への答弁概要
物価高騰と公共事業への影響について
静岡市民文化会館再整備事業について
静岡市民文化会館再整備事業について、不調の要因は何か
今回の予定価格は、物価の高騰が続いていることから、入札直近に物価高騰を踏まえた最終の補正積算を行い、価格を設定しました。
しかし、開札の結果、入札価格が予定価格の2倍以上の金額での入札不調となりました。
今回の入札不調の要因を分析するにあたっては、まず、新築と補修の違いを認識しておく必要があります。
新築の場合は、設計書を元に、最も効率的、合理的な施工計画を定め、その計画に沿って工事を進めていくことができます。
一方、補修の場合は、計画どおりに工事が進むとは限りません。例えば、内壁の表面の板を剥がし、劣化の状態などを確認しながら、既存部材の撤去を進めるという作業が発生します。
事前に壁の内側の状態をすべて確認することはできないので、想定外に撤去が難航することがありえます。
そして、新しい材料を持ち込み、補修をしますが、予め工場製作でユニット化したものを持ち込むのではなく、現場で寸法を測定し、それに合わせて材料を調整し、施工するという工事が多くあります。その分、手間がかかります。
このようなことから、当初計画通りに作業が進まず、想定以上に費用と時間がかかり、工期に遅れが生じるというリスクがあります。
このように、補修工事においては、様々な不確実性やリスクが伴いますが、受注する会社は、これらのリスクを費用として、入札の際の積算価格に予め組み込んでおく必要があります。
このときに、発注者の積算価格と応札者の積算価格に乖離が発生する、いくつかの要因が存在します。主な要因を2つあげます。
ひとつは、日本の公共工事においては、発注者はこのリスクを積算価格に反映する仕組みが一般にはありません。
海外プロジェクトの場合は、予備費、コンティンジェンシーとも言いますけれども、予備費の形で、目標予算を超過してしまうリスクを予め上乗せして積算価格に計上するということがあります。
しかし、日本の公共工事の場合は、積算基準の中に予備費の項目はありません。
一方で、受注者側はリスクを予備費として組み込んでおかなければ、赤字受注になってしまうリスクがあります。
建築関係の需給がゆるいときは、受注者がなんとか受注したいので、リスクを少なめに見積もることもありえます。
しかし、需給がひっ迫しているときは、リスクをより慎重に判断し、リスクの積算価格への上乗せ額が大きくなりがちとなります。
ふたつめは、今回の工事が、様々な工事内容の大規模補修工事であることです。
例えば、設定した工期の中で、2つのホールを並行して工事を進める内容になっています。
耐震補強を行った上で、特定天井や空調設備、舞台設備、客席の更新など、様々な専門技術者を要する補修工事を行うことになります。複雑な工程管理が必要であり、かつ特定の時期に特定の人手を、相当数確保する必要がある、そういう工事内容になっています。
このため、大手の建設会社、ゼネコンや他県の専門施工事業者の参加が必要となります。現在は全国規模で建築関係の需給がひっ迫し、とりわけ建築設備関係の専門施工事業者の人手不足や建築設備の物価上昇が続いている状況です。
このため、このような補修工事においては、高い値段で人手や設備を確保せざるを得ないという状況になります。
このような状況下であっても、公共工事の積算は、国が示す積算基準、例えば国交省が監修する「公共建築工事積算基準」に基づき積算します。
積算基準には、建築工事に必要な数量や単価の考え方などが示されており、その基準に基づき、できる限り、時価、実勢価格を反映したものとして、予定価格を設定します。
しかし、この積算基準は、前述のような目下の特殊要因をうまく予定価格に反映する仕組みになっていません。
このように、現在の市況においては、かつ、大規模補修工事においては、入札価格が予定価格を大幅に上回ってしまうという構造的な要因が存在します。
以上が主たる要因ですが、この他にも、様々なコスト上昇要因があります。それらが重なったことにより、市が設定した予定価格よりも、入札価格が大幅に上振れしたものと考えています。