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更新日:2025年12月3日
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松谷清議員の質問への答弁概要
目次
リニア中央新幹線トンネル工事における南アルプスの環境保全について
- 薬液注入のプレグラウトとはどのような手法で、土被り1,400メートルの破砕帯で薬液注入は可能であるのか。
- 藤島発生土置き場の盛土計画に対し、市は今後どのように対応していくのか。
- 調査等の結果、課題が残る場合は静岡市として工事許可は認めない姿勢をとる考えはあるのか。
質問と答弁の概要
薬液注入のプレグラウトとはどのような手法で、土被り1,400メートルの破砕帯で薬液注入は可能であるのか。
トンネル掘削の際の薬液注入の「プレグラウト」あるいは「ポストグラウト」は、JR東海が実施するものですので、静岡市が説明すべき内容ではありません。
環境影響評価についての静岡市とJR東海との対話において、静岡市は、プレグラウトはどのような手法であると認識し、土被り1,400メートルの破砕帯で薬液注入は可能であるか否かについて、どのように認識しているのか、というご質問であろうして、お答えします。
プレグラウトというカタカナ用語なので分かりにくいですが、プレグラウト工法は、土や岩の隙間に事前に接着剤を充填する工法、事前接着剤充填工法と認識しています。
ポストグラウトは、事後接着剤充填工法です。
薬液注入が可能かということですが、薬液注入は当然可能です。問題は、薬液注入により止水が可能かどうかです。
昨日、大石議員が議長の許可を得て、翻訳機能の説明をスマホを用いてされておられましたことを参考にして、私も議長の許可を得て、注射器を用いて被圧状態のグラウト工法について、ご説明をいたします。
被圧状態の水というのは、この注射器の中の水、実際には空気しか入っていませんけれど、上からの圧力をかける、これが被圧になり水圧だったりします。
1,400メートルの深さがあると、水がつながっていると、1,400メートルの高さの水圧がかかることになります。
岩山の中では、被圧状態の中でも地中の隙間が水道としてつながっていない限り、水は流れにくい状態にあります。
これが、岩盤で硬くて隙間がないとすれば、いくらこうやっても水は流れないですね、被圧状態で。空気なので下がりますけれど、実際には流れない。
ただ、トンネルを掘ってこれがなくなると、地下水と水がつながって、トンネルの中の空気圧で、こうなるわけですね。
そうすると水がざっと出ていくということになります。
そこで、こうならないように、トンネルを掘削する前にトンネルの周辺の隙間を接着剤で充填して、これを見ていただけるとわかるのですけれど、これ消しゴムです。
この消しゴムのような状態を、接着剤を充填してやるとこうなりますけれど、流れないですよね。
そうすると、これがトンネル面だとすると、これを取ってもこれが効いていますから水が流れないということになります。
これが、プレグラウトの効果ということになります。
したがって、このプレグラウトでこうやったものを壊さないように、ここを慎重に掘ってやれば水は出てこないということになります。
ところが、何らかの理由で一旦大量湧水が発生すると、水が出ていますので隙間を埋めようと思っても、シャッとこうなってしまうんですね。
そうすると、このように、水圧と流れる力、流水圧とも言いますけれども、接着剤部分が流されてしまうので止水が困難になる、こういうことです。
よって、ポストグラウトという、湧水発生後に隙間を接着剤で埋める止水方法というのは、非常に止水の困難性が高いと言えます。
感覚的にもわかりやすいと思いますけれど、ここにあらかじめ、ここに接着剤を入れて、それが固まれば水は出ない、水を通しにくいわけですけれども、一旦水が流れ出している後に、ここの中に接着剤を入れようとしても流されますので、止水効果はなかなか出ないということになります。
したがって、トンネル掘削前のトンネル切羽周辺に事前に薬液注入を実施するプレグラウトによって湧水量を最小化するということが、非常に重要になってきます。
そして、大量湧水が発生しないよう慎重に掘って、湧水があった時は早めにポストグラウト、事後の接着剤充填をするということですね。
ざーざー流れるより前に、出始めたときに入れれば、まだ止まる可能性があるということです。
大量湧水という、サーっと出始めて破綻があった場合は、湧水中はポストグラウトでは止められませんので、水が全部出た後に、ここに入れると、こういうことになります。
ですから、湧水量がおさまったところでポストグラウトをするのは、止水が効く可能性もありますから、水はみんな出ていますけれども。
なお、静岡市中央新幹線建設事業影響評価協議会では、生物多様性への影響を検討するにあたっては、あらかじめ影響の回避・低減に最善の努力をする、先ほどのようなプレグラウトで一生懸命止めるということをやりますけれども、それで影響の回避・低減について最善の努力をしますが、その場合であっても、最悪の事態を想定して、薬液注入による止水が効かなかった場合、すなわち、止水効果なしの場合で地下水位の低下や沢の流量減少の算定を、JR東海に求めています。
そして、その最悪の状態のとき、つまり止水効果がなかったときに、植生や水生生物等へどういう影響が出るか、それにどう対処するかということを検討するようにしています。
藤島発生土置き場の盛土計画に対し、市は今後どのように対応していくのか。
藤島発生土置き場における盛土の安定性については、市協議会でしっかりと議論を行い、盛土規制法に基づき適切に許可の判断を行っていきます。
盛土が環境に与える影響については、盛土規制法には規定がありません。
要対策土の盛土の環境への影響については、県盛土環境条例が適用されますので、その解釈権を持つ県における議論を踏まえて、市協議会においても委員からご意見を伺い、環境影響評価として適正に判断していきます。
繰り返しになりますけれども、安定性については盛土規制法に基づく市の権限で行いますので、市が許可をしていくということになります。
この際に、盛土の安定性や環境に与える影響について、「リニア事業だから、盛土規制について特別のことをやるべきだ」という考え方もありますが、行政機関には法律の適正な運用が求められます。
盛土の安定性や環境への影響についての評価は、盛土を行う事業全体、すなわち、リニア事業の大規模性に応じて行うものではありません。
対象とする盛土の安定性や環境への影響の大きさに応じて評価すべきものです。
よって、藤島盛土の盛土安定性や環境への影響については、その盛土が与える影響の大きさに応じて適切に評価することが基本だと考えています。
したがって、リニア事業だからと言って、事業の大きさをもって評価をしてはいけないというのが、法律の適正な運用上、そのような運用をすべきだと思っています。
なお、リニア工事による南アルプスの生物多様性への影響については、南アルプスという環境の特殊性に応じ、特別の影響評価が必要です。
リニア工事という大規模事業だから、特別の環境影響評価が必要なのではなくて、あくまで、生物多様性ということについて、南アルプスの環境の特殊性、それへの影響の大きさに応じて適切な評価を行うということが重要だと思っています。
このような考え方を、法令や条例を運用する行政機関、静岡市はしっかり認識して、これまでもそのような対応をしてきておりますけれども、今後もそのような対応をしていくべきだと考えております。
調査等の結果、課題が残る場合は静岡市として工事許可は認めない姿勢をとる考えはあるのか。
時間の関係だと思いますけれども、工事がどの工事のことをおっしゃっているのか、ちょっとよくわかりませんでしたので、静岡市が持っている工事許可の権限である盛土規制法に基づく工事許可について、お話をいたしますけれども。
盛土規制法に基づく許可は、盛土をすることを特別に許可するものではなくて、特別の許可の場合は裁量が働きますけれども、盛土の安定性について一定の要件が整っている場合は、許可をしなければならないという性質のものになります。
したがって、要件が整えば、盛土工事の許可をするということになります。
リニア工事全体について、もしご質問されているのであれば、静岡市は工事許可の権限を持っていませんので、静岡市としては、環境影響評価法等の規定に基づいて、環境の保全についての配慮が適正になされるよう、JR東海に引き続き求めていくということになります。